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World Standard
あさがお
Conatala
- Cat No: CONATALA-002
- updated:2022-02-07
国産80sアヴァンロックPALE COCOON/ 繭 を〈INCIDENTAL MUSIC〉と共同で再発した〈CONATALA〉から、ワールド・スタンダードが細野晴臣プロデュースで1985年にデビューする以前に制作していた音源をアナログリリース!
Track List
1982年、春から夏へと向かう季節。ふたりの若者が青春時代の一時期を費やして、1本のカセットテープの録音に明け暮れていた。その年の3月から"世界の標準"を意味するグループ名「ワールドスタンダード」を名乗り始めていたふたり、鈴木惣一朗と児島路夫。
東京西荻窪にあった児島の実家の一室で、2台のカセットデッキのピンポン録音を駆使しながら制作されていたその音楽は、鈴木が部屋で爪弾くギターやマンドリン、ウクレレを中心に、廊下を隔てた日本間に置かれていた児島のアップライトピアノが時おり加わった。さらには、浴室のエコーの鳴りを使って録られたパーカッションや、おもちゃのピアニカやラッパ、段ボールでこしらえたドラムが楽器として用いられるなど、子供のような無邪気さと実験精神に溢れた、思いつく限りの創意工夫が試された。演奏の背後でつけっぱなしのテレビの音や、さりげない生活音までもが彼らの音楽の一部として紛れ込んだ。楽しげな演奏を聞きつけ、同居していた児島の祖父母が襖を開けて録音の様子を見学に来ることもあった(ふたりはそのまま、老夫婦にお昼御飯をご馳走になったりもした)。
テープを回し幾度も繰り返し音を重ねて行くうち、若者たちは、この世のどこか遥か遠い国のフォークロアのようなその響きを、東京の街の片隅で自分たちだけが傍受することに成功したような気持ちになって、大いに興奮した。
80年代の東京のサブカルチャー・シーンを席巻していたテクノポップ、ニュー・ウェイヴの季節にあって、彼らが奏でるアナログでアコースティックな音色は、どこかノスタルジックな時代への情緒を湛えたものだった。エッジーで未来的なシンセ・サウンドに対し、彼らが懸命に音の中に描き出そうとしていたのは、モノクロのヨーロッパ映画のスクリーンの中で見た景色や、東京の街から次第に失われつつあった古き良き日本家屋の縁側の風景への憧憬の念だった。D.I.Y.、ベッドルーム・レコーディングという言葉すら無かった時代。鈴木と児島は1本のカセットテープの中に、懐かしくて新しい、まだ誰も聴いたことのない大衆音楽の誕生を夢見た。
本作品『あさがお』は、1985年、NON-STANDARDレーベルから細野晴臣プロデュースにより『World Standard』でデビューする以前に制作された幾つかのカセットテープの最初の作品。メンバーの友人たちの間で配布された他、前年から放送が始まっていたNHK–FM「サウンド・ストリート」(火曜パーソナリティー:坂本龍一)デモ・テープ特集への応募、カセット・マガジン「TRA」、アルファ・レコード/YENレーベルなどへ送られたものも併せて20本程度がダビングされて出回った。
当時の曲順のまま手を加えることなく、リマスタリングによって蘇った音源が、レコード盤として初めて世に出ることとなる。
『あさがお』のマスタリングは原真人。オリジナル・カセットのデザインを横山雄が再構築、インサートを含む全てのデザイン及び構成も手掛けている。
東京西荻窪にあった児島の実家の一室で、2台のカセットデッキのピンポン録音を駆使しながら制作されていたその音楽は、鈴木が部屋で爪弾くギターやマンドリン、ウクレレを中心に、廊下を隔てた日本間に置かれていた児島のアップライトピアノが時おり加わった。さらには、浴室のエコーの鳴りを使って録られたパーカッションや、おもちゃのピアニカやラッパ、段ボールでこしらえたドラムが楽器として用いられるなど、子供のような無邪気さと実験精神に溢れた、思いつく限りの創意工夫が試された。演奏の背後でつけっぱなしのテレビの音や、さりげない生活音までもが彼らの音楽の一部として紛れ込んだ。楽しげな演奏を聞きつけ、同居していた児島の祖父母が襖を開けて録音の様子を見学に来ることもあった(ふたりはそのまま、老夫婦にお昼御飯をご馳走になったりもした)。
テープを回し幾度も繰り返し音を重ねて行くうち、若者たちは、この世のどこか遥か遠い国のフォークロアのようなその響きを、東京の街の片隅で自分たちだけが傍受することに成功したような気持ちになって、大いに興奮した。
80年代の東京のサブカルチャー・シーンを席巻していたテクノポップ、ニュー・ウェイヴの季節にあって、彼らが奏でるアナログでアコースティックな音色は、どこかノスタルジックな時代への情緒を湛えたものだった。エッジーで未来的なシンセ・サウンドに対し、彼らが懸命に音の中に描き出そうとしていたのは、モノクロのヨーロッパ映画のスクリーンの中で見た景色や、東京の街から次第に失われつつあった古き良き日本家屋の縁側の風景への憧憬の念だった。D.I.Y.、ベッドルーム・レコーディングという言葉すら無かった時代。鈴木と児島は1本のカセットテープの中に、懐かしくて新しい、まだ誰も聴いたことのない大衆音楽の誕生を夢見た。
本作品『あさがお』は、1985年、NON-STANDARDレーベルから細野晴臣プロデュースにより『World Standard』でデビューする以前に制作された幾つかのカセットテープの最初の作品。メンバーの友人たちの間で配布された他、前年から放送が始まっていたNHK–FM「サウンド・ストリート」(火曜パーソナリティー:坂本龍一)デモ・テープ特集への応募、カセット・マガジン「TRA」、アルファ・レコード/YENレーベルなどへ送られたものも併せて20本程度がダビングされて出回った。
当時の曲順のまま手を加えることなく、リマスタリングによって蘇った音源が、レコード盤として初めて世に出ることとなる。
『あさがお』のマスタリングは原真人。オリジナル・カセットのデザインを横山雄が再構築、インサートを含む全てのデザイン及び構成も手掛けている。
鈴木惣一朗と児島路夫のワールドスタンダードがデビュー前に制作していたカセット音源がアナログ化されました。細野プロデュースのデビューアルバムや2ND「Allo!」は海外からも人気でご存知のとおりですが、この音源のLO-FIな音の中に秘められた、音楽のアイデア、ユニークさに驚きです。鈴木惣一朗の著書「細野晴臣 録音術 ぼくらはこうして音をつくってきた」の冒頭で、『細野の「泰安洋行」に出会い、圧倒され、4トラックのカセットレコーダーとシュアーのマイクひとつで制作を始めた』と語られる音源だと思います。DIYさや無邪気さ。そしてそこだけには収まらない魅力、好きな音楽の模倣をすることを超えたキラメキがあります。素晴らしい音楽。是非。 (サイトウ)