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Terre Thaemlitz
Deproduction 不産主義
Comatonse
- Cat No: C.027
- updated:2024-01-21
テーリ・テムリッツ氏の新作「Deproduction 不産主義」。86分の映像作品と、PDFテキスト、2つの長編のサウンドファイル、ボーナスのピアノ・ソロ、DJ Sprinklesの2つのリミックスのデジタルのオーディオ・ファイルを収録したSD CARDと10枚のカードがセットになったマルチメディア・アルバム。
「要約」
私たちの生きるこの時代、支配的なLGBT運動の主張はますます家族、婚姻、繁殖、兵役といったテーマをめぐるようになっている。こうした問題をめぐる社会的分析や組織化のための文化的条件は、核家族、私的・公的空間という奇妙なまでに西洋人間主義的な概念への積極的な屈服を要求する。その結果、家族構造のフェミニスト的・クィア的で批判的な拒絶を目にすることはますます稀になってきている。家族内・家庭内暴力を、より大規模でより制度化された支配の徴候として理解することは、ほとんど不可能になっている。
今日のクィア・ファミリーに、いかにも一般的でヘテロ標準的なやり方で与えられている待ちに待った約束は、家族の野蛮は今の世代が前の世代よりもましであることによって乗り越えられるという自己中心的な考え以外の何ものでもない。いつまでも不在なのは、親にならないという意志を持つことの意味に関する議論である。それは依然として、中絶による解放を祝福することと同様に、タブーとされている。
オーディオ、テクスト、ビデオを用いるマルチメディア・プロジェクト『不産主義』でテーリ・テムリッツは、家族という西洋人間主義的な概念の背後にある厄介で不快で偽善的な権力の力学を、そしてそれがグローバリゼーションのプロセスを通してどのように国際的に機能するかを探究する。
これまでの作品でテムリッツは、私たちが民主主義的な社会計画の歴史的終焉を今まさに経験しているのだという仮説を立ててきた。資本主義と民主主義が本質的に結びついているという冷戦期の前提は過去のものである。西欧の奴隷制の歴史、そして非民主的諸国で現在進行している資本主義的経済活動の拡張からも分かるように、資本主義は、平等な労働よりも奴隷制とよりよく調和する。資本主義のこの蔓延ぶりは、新しい民主主義国家が全く設立されないという事実と表裏一体である。一方で、国家・国民の敵と伝統的に見なされていたものは、概ね一族・教義の敵に取って代わられた。こうした全ては家族、支配者の一族、生得的なるものの力を再復興するものである。
民主主義的諸国では、このことは、セクシュアリティとジェンダーを生物学的な先天性に帰する本質主義的主張に基づいてLGBTの権利を法制化するという身振りに現われている。古き日の貴族のように、私たちはいつの間にか自分の権利主張を自分の血に基づいて正当化しているのだ。トランスセクシュアル・コミュニティでは、権利主張--医療へのアクセスを含む--はしばしば性同一性障害(GID)として正式に診断されることと不可分である。精神障害者、病人としての自己同一化が、文化的イニシエーションと承認のための儀式となる。それはまた、文化的推進力とノーマライゼーションの鍵となるのだ。
テムリッツの問題提起は、トランスジェンダー・コミュニティにおける文化的推進力と精神障害のこうした関係と、西洋人間主義的価値観、とりわけ旧来の氏族的・大家族的家族構造へのそのあからさまな敵意をめぐって--西欧はこの矛盾を神経質に否認し、それに対して目を閉ざしているのだが--グローバルに共有された違和感が表裏一体であるというものである。しかも、家父長制のもとにジェンダーを一致させる身振りとしての性転換を要求されるという文化的・反フェミニスト的妥協は、資本主義の拡張を要求されるという文化的・反民主主義的妥協と表裏一体である。西欧内外で、ラディカルなクィア主義に対する検閲は民主的な組織化に対する検閲と絡み合っている。そしてどちらの問題の中心にも横たわっているのが、性的表現、繁殖、コミュニティの存続、自己の存続のための公認の文化的な場としての家族なのである。
『不産主義』は、文化的生産と生物学的再生産の間のこうした対立を探究し、再生産しないことを選ぶ人々の文化的擁護を提案する。これらの分析はテムリッツ自身の非本質主義、全性愛的クィア主義、性転換を伴わないトランスジェンダリズムによって方向性を与えられるだろう。テムリッツはこのプロジェクトに、永住権を持ちスタジオがある日本で取り組み、それを2017年にドクメンタ14の支援を得てアテネで初演する。
翻訳:新井知行。
オーディオ
登場人物は仮名(近親相姦ポルノのための音とテキスト)
Names Have Been Changed (Sound/Reading for Incest Porn)
Duration: 00:43'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com/soundfiles/c027/c027_01.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
苦しみのもとを認めよ(そして立ち去れ)(ゲイ・ポルノのための音とテキスト)
Admit It's Killing You (And Leave) (Sound/Reading for Gay Porn)
Duration: 00:43'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com//soundfiles/c027/c027_02.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
Bonus: Admit It's Killing You (And Leave) (Piano Solo)
Duration: 00:13'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com//soundfiles/c027/c027_03.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
Bonus: Names Have Been Changed (DJ Sprinkles' Deeperama)
Duration: 00:13'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com//soundfiles/c027/c027_04.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
Bonus: Admit It's Killing You (And Leave) (DJ Sprinkles' Deeperama)
Duration: 00:13'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com/soundfiles/c027/c027_05.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
ビデオ
Deproduction
(EN) Duration: 01:16'00 (h:m's) HD Video 1920x1080 48k/320kB/s Audio
不産主義
(JP) Duration: 01:16'00 (h:m's) HD Video 1920x1080 48k/320kB/s Audio
テキスト
Deproduction
(EN, JP, GR, DE)
私たちの生きるこの時代、支配的なLGBT運動の主張はますます家族、婚姻、繁殖、兵役といったテーマをめぐるようになっている。こうした問題をめぐる社会的分析や組織化のための文化的条件は、核家族、私的・公的空間という奇妙なまでに西洋人間主義的な概念への積極的な屈服を要求する。その結果、家族構造のフェミニスト的・クィア的で批判的な拒絶を目にすることはますます稀になってきている。家族内・家庭内暴力を、より大規模でより制度化された支配の徴候として理解することは、ほとんど不可能になっている。
今日のクィア・ファミリーに、いかにも一般的でヘテロ標準的なやり方で与えられている待ちに待った約束は、家族の野蛮は今の世代が前の世代よりもましであることによって乗り越えられるという自己中心的な考え以外の何ものでもない。いつまでも不在なのは、親にならないという意志を持つことの意味に関する議論である。それは依然として、中絶による解放を祝福することと同様に、タブーとされている。
オーディオ、テクスト、ビデオを用いるマルチメディア・プロジェクト『不産主義』でテーリ・テムリッツは、家族という西洋人間主義的な概念の背後にある厄介で不快で偽善的な権力の力学を、そしてそれがグローバリゼーションのプロセスを通してどのように国際的に機能するかを探究する。
これまでの作品でテムリッツは、私たちが民主主義的な社会計画の歴史的終焉を今まさに経験しているのだという仮説を立ててきた。資本主義と民主主義が本質的に結びついているという冷戦期の前提は過去のものである。西欧の奴隷制の歴史、そして非民主的諸国で現在進行している資本主義的経済活動の拡張からも分かるように、資本主義は、平等な労働よりも奴隷制とよりよく調和する。資本主義のこの蔓延ぶりは、新しい民主主義国家が全く設立されないという事実と表裏一体である。一方で、国家・国民の敵と伝統的に見なされていたものは、概ね一族・教義の敵に取って代わられた。こうした全ては家族、支配者の一族、生得的なるものの力を再復興するものである。
民主主義的諸国では、このことは、セクシュアリティとジェンダーを生物学的な先天性に帰する本質主義的主張に基づいてLGBTの権利を法制化するという身振りに現われている。古き日の貴族のように、私たちはいつの間にか自分の権利主張を自分の血に基づいて正当化しているのだ。トランスセクシュアル・コミュニティでは、権利主張--医療へのアクセスを含む--はしばしば性同一性障害(GID)として正式に診断されることと不可分である。精神障害者、病人としての自己同一化が、文化的イニシエーションと承認のための儀式となる。それはまた、文化的推進力とノーマライゼーションの鍵となるのだ。
テムリッツの問題提起は、トランスジェンダー・コミュニティにおける文化的推進力と精神障害のこうした関係と、西洋人間主義的価値観、とりわけ旧来の氏族的・大家族的家族構造へのそのあからさまな敵意をめぐって--西欧はこの矛盾を神経質に否認し、それに対して目を閉ざしているのだが--グローバルに共有された違和感が表裏一体であるというものである。しかも、家父長制のもとにジェンダーを一致させる身振りとしての性転換を要求されるという文化的・反フェミニスト的妥協は、資本主義の拡張を要求されるという文化的・反民主主義的妥協と表裏一体である。西欧内外で、ラディカルなクィア主義に対する検閲は民主的な組織化に対する検閲と絡み合っている。そしてどちらの問題の中心にも横たわっているのが、性的表現、繁殖、コミュニティの存続、自己の存続のための公認の文化的な場としての家族なのである。
『不産主義』は、文化的生産と生物学的再生産の間のこうした対立を探究し、再生産しないことを選ぶ人々の文化的擁護を提案する。これらの分析はテムリッツ自身の非本質主義、全性愛的クィア主義、性転換を伴わないトランスジェンダリズムによって方向性を与えられるだろう。テムリッツはこのプロジェクトに、永住権を持ちスタジオがある日本で取り組み、それを2017年にドクメンタ14の支援を得てアテネで初演する。
翻訳:新井知行。
オーディオ
登場人物は仮名(近親相姦ポルノのための音とテキスト)
Names Have Been Changed (Sound/Reading for Incest Porn)
Duration: 00:43'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com/soundfiles/c027/c027_01.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
苦しみのもとを認めよ(そして立ち去れ)(ゲイ・ポルノのための音とテキスト)
Admit It's Killing You (And Leave) (Sound/Reading for Gay Porn)
Duration: 00:43'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com//soundfiles/c027/c027_02.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
Bonus: Admit It's Killing You (And Leave) (Piano Solo)
Duration: 00:13'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com//soundfiles/c027/c027_03.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
Bonus: Names Have Been Changed (DJ Sprinkles' Deeperama)
Duration: 00:13'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com//soundfiles/c027/c027_04.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
Bonus: Admit It's Killing You (And Leave) (DJ Sprinkles' Deeperama)
Duration: 00:13'00 (h:m's) 48k/24bit AIFF
http://www.comatonse.com/soundfiles/c027/c027_05.mp3" target="mp3">(Excerpt / 抜粋) 1:00 986K MP3 128kB/s
ビデオ
Deproduction
(EN) Duration: 01:16'00 (h:m's) HD Video 1920x1080 48k/320kB/s Audio
不産主義
(JP) Duration: 01:16'00 (h:m's) HD Video 1920x1080 48k/320kB/s Audio
テキスト
Deproduction
(EN, JP, GR, DE)
Deproduction (JP: Comatonse Recordings, C.027) is a new multi-media album by Terre Thaemlitz, sold as an 8GB SDHC card containing audio (48k/24bit AIFF files), video (86 min., HD 1920x1080) and texts (PDF). The project was produced with support from documenta 14 and Akademie der Künste der Welt, with the world premiere at documenta 14 in Athens on July 9, 2017.
We live in an era in which dominant LGBT agendas are increasingly revolving around themes of family, matrimony, breeding and military service. The cultural terms for social analyses and organizing around such issues requires an aggressive capitulation to peculiarly Western Humanist notions of the nuclear family, as well as private and public space. As a result, Feminist and Queer critical rejections of family structures (nuclear and otherwise) are increasingly scarce. An ability to understand the abuses of family and domestic violence as symptoms of larger institutionalized dominations becomes virtually impossible.
In a stereotypically familiar and heteronormative manner, the anticipated promise behind today's Queer families is nothing more than the egocentric notion that familial abuses will be resolved by this generation being better parents than the previous generation. What is forever absent are discussions of what it means to deliberately not be a parent, and to deliberately abandon family. They remain as taboo as the notion of celebrating the relief of an abortion.
In Deproduction, Terre Thaemlitz investigates the awkward, uncomfortable and hypocritical power dynamics behind Western Humanist notions of family, and how they function internationally through processes of globalization.
We live in an era in which dominant LGBT agendas are increasingly revolving around themes of family, matrimony, breeding and military service. The cultural terms for social analyses and organizing around such issues requires an aggressive capitulation to peculiarly Western Humanist notions of the nuclear family, as well as private and public space. As a result, Feminist and Queer critical rejections of family structures (nuclear and otherwise) are increasingly scarce. An ability to understand the abuses of family and domestic violence as symptoms of larger institutionalized dominations becomes virtually impossible.
In a stereotypically familiar and heteronormative manner, the anticipated promise behind today's Queer families is nothing more than the egocentric notion that familial abuses will be resolved by this generation being better parents than the previous generation. What is forever absent are discussions of what it means to deliberately not be a parent, and to deliberately abandon family. They remain as taboo as the notion of celebrating the relief of an abortion.
In Deproduction, Terre Thaemlitz investigates the awkward, uncomfortable and hypocritical power dynamics behind Western Humanist notions of family, and how they function internationally through processes of globalization.
「オーディオ、テクスト、ビデオを用いるマルチメディア・プロジェクト『不産主義』でテーリ・テムリッツは、家族という西洋人間主義的な概念の背後にある厄介で不快で偽善的な権力の力学を、そしてそれがグローバリゼーションのプロセスを通してどのように国際的に機能するかを探究する。」この作品へのテキスト要約版と音のサンプルを単体ページに掲載しているので是非目を通してください。映像で視覚的に体験し、テキストを考えるのもいいと思うし、完全に音の世界に浸るのも良いと思います。ちょっと長めにとった試聴sample1じっくり意識を傾けてみてください。「音で表現する」ということへのテーリさんの向き合い方に打たれるたれます。大作。作品であり問題提起。(こちらの作品は、国内送料無料でお送りできます。) (サイトウ)