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- New Release
XTAL
EKO
KAKUBARHYTHM
- Cat No: KAKU-211
- updated:2024-12-11
Traks Boys、(((さらうんど)))、吉澤成友(YOUR SONG IS GOOD)とのユニッ トなど精力的にリリースを重ねているXTAL(クリスタル)による3作目となる新作ソロアルバム『EKO(エコー)』がカクバリズムよりリリース!シューゲイズ的エレクトロニック・ソウルフルにディープハウス/ダンスミュージックの血潮を感じさせながらノンビート的に挑んだIDMエレクトロニカ入魂新作アルバム。
Track List
〈LYRIC〉
A Leap (Album Version) feat. Achico
Words by Jun Kamoda, Music by XTAL
入りきらない過去が乖離したからだを掴んではなさない
とまらない右手がかわらない愚かさを掴んではなさない
優しさをいつでも見過ごしているから
あなたはいつでもあの時へ逃してる
この時も逃しそうで悲しみへ落ちてゆく
飛べずに
すくむ足をみつめて喜びに焦がれた
くすぶる心みつけて跳躍を誓った
あなたは誓った
Rocking Chair feat. Achico, Yuichi Ushioda
Words by POCOPEN, Music by Kazuhiro Nishiwaki
夜明けを告げに降りてくる天使は
軽やかな煙のツバサで
夜明けを告げに降りてくる天使は
やわらかな大理石の素足で
ナイチンゲールの貴婦人たちは 静かに長いスカートのすそを引きずりながら 遠のいてゆく遠のいてゆく 深い海の底は乾き
失われた記憶を取り戻す
でもあなたを見失った場所はなぜか
思い出せない
夜明けを告げに降りてくる天使は 罪を知らない美しい横顔で 夜明けを告げに降りてくる天使は つま先にうす紅色の光をたたえてる
ナイチンゲールの貴婦人たちは 静かに長いスカートのすそを引きずりながら 遠のいてゆく遠のいてゆく 空はレモネードの雨を 今しきりに降り注いでる このあなたのロッキンチェアに 主が座っていようといまいと おかまいなしさ...
〈XTALによるLINER NOTES〉
01. A feat. Achiko
Jun Kamoda主宰のJun Recordsより2020年にリリースされたシングル「A Leap feat. Achiko」か ら、アチコさんのコーラス部分を使用。他のパートは、前作アルバム『Aburelu』リリース直後 (2020年)に大部分を制作。当時、『Aburelu』によって、自分独自の制作スタイルを一気に開拓 できた感覚があり、その勢いでどんどんデモや曲の断片を作っていた。曲の骨格自体はその頃か ら存在していたが、今回5曲目の「A Leap (Album Version)」が先に完成し、そのコーラスを使用したこの曲が1曲目にふさわしいと感じて引っ張り出してきた(2020年の制作開始時から、この曲 は次のアルバムの1曲目にしたいと考えていた)。今作収録に際してリズム部分を追加したが、同 様のリズムアプローチは4曲目「BCF」で先に試しており、再びここでも使用している。別の曲の 素材を使って新しい曲を作るという音のリサイクルは、私の好きな手法でもある。(5曲目「A Leap」の解説に続く)
02. Fran
RolandのサンプラーSP-404MKIIは、今回のアルバム制作におけるメイン機材であり、この曲も全 てSP-404MKIIによる演奏。気に入った音の断片をSP-404MKIIに入れて音を重ねていくのだが、パッドを手で押す演奏、かつクリックを使っていないため、時間の区切りを作らない自由な音の配 置、というこのアルバムの特徴がここにも現れている。女性の声素材と太いベースサウンドもアル バム全体に共通する要素だが、この曲でもその2つが際立っている。
03. Savi
この曲もSP-404MKIIによる演奏。印象に残るのは、破かれたような質感のコードのサウンドだ が、これは元々エレクトリック・ピアノのフレーズだった音素材を、DAWソフトAbleton Liveのエ フェクターでビットレートを1bitまで下げたもの。70年代のジャマイカのダブは、私がジャンルと して好きな音楽の一つだが、ダブの重要な特徴である「消すことで、存在していたものの存在や 不在を際立たせる」という技法は、楽器のパートのミュートやエフェクトによる残響によって行 われる。ここでは、その「消すこと」を「ビットレートを下げる」という形に変換して適用してみた。
04. BCF
ピアノのフレーズにchase bliss MOOD MKIIでエフェクトを加え、様々な音程にシフトしたサンプ ルをリアルタイムに重ねた。2回登場するリズムのフレーズは、旧友であるKesと脳がメンバーで あるユニットPaisley Parksの音楽性から着想を得ている。彼らのスタイルはJuke / Footworkに分 類されると思うが、そのリズムパターンを拝借し、2倍速に加速した上で、SP-404MKIIでサンプル のスタートポイントをずらしながらトリガーし、コントロールが効かない感覚を楽しみながら録 音した。
05. A Leap feat. Achiko
(1曲目「A」の解説から続く)シングルバージョンから、アチコさんのボーカルトラック以外の 全ての音を入れ替えた。キック抜きのハウス的なリズムもすべて取り払い、疾走感ではなく浮遊 感を感じるアプローチに変更。曲の終わりに、うっすらとシングルバージョンに使用していたリズ ムトラックが聞こえるが、これはアチコさんのボーカルトラックに入っていたもので、録音時にヘ ッドフォンから漏れていた音だと思われる。こうした意図しない音が好きなので、あえて残すこと にした。
06. Dokoe
1~4曲目はグリッドに沿わない自由な時間軸のトラックが続くため、5曲目「A Leap」とこの6曲 目「Dokoe」ではグリッドに沿ったトラックを配置し、少し落ち着いた流れを作った。エレクト リックピアノの音をSP-404MKIIで少し揺らした程度で、あとはコンピュータ内でAbleton Liveによ る編集を施した。
07. Yao
少し落ち着いたところで、再び自由な時間軸のトラックが続く。このトラックは、Roland社のリ ズムマシンTR-808のサウンドのみで作成。ただし、原型を留めている音はほとんどなく、 SP-404MKIIに取り込んで様々な加工を施し、シンセサイザーのようなコードやベースに変化させ て演奏している。
08. Mil
高音の女性の声サンプルを演奏しているときに、ullaのアルバム『Foam』に似た雰囲気を感じ た。自分のアルバム『EKO』に似た音楽性の作品はあまり多くないが、ullaのこの作品は、時間に 対する自由な捉え方やサンプルの選び方、扱い方に共通する部分がある。
09. Rusu
この作品で最初に取り掛かったトラック。ブラシで演奏されたシンバルのサンプルは、João Gilbertoのアルバム『João Gilberto』を聴いていて思いついた。このアルバムは、自分の音楽とは 全く異なるが、最小限のアンサンブルで広い音域を表現している点が素晴らしく、その点で影響 を受けた。大まかなアレンジは完成していたが、3曲目「Savi」を作った後、ビットレートを1bit まで下げるエフェクトを再度使用したいと考え、ボーカルサンプル以外のパートに適用している。
10. Sol A
4曲目「BCF」と同様に、chase bliss MOOD MKIIのエフェクトが重要。この曲ではベースを入れ ず、インタールード的な狙いで制作した。
11. Rocking Chair feat. Achiko, Yuuichi Ushioda Sakanaによる、94年発表の楽曲のカバー。昔から大好きな曲だったが、この曲が収録されている アルバム『光線 Le Rayon』は現在入手困難で、この素晴らしい楽曲に触れられる機会を拡げた い、というのも今回カバーした理由の一つ。2023年末にAchicoさんと会った時に、この曲をカバ ーしてみたい旨を伝えたところ、同じくSakanaが好きだったことから快諾してくれ、制作が始ま った。Achicoさんからの紹介でギターは、潮田雄一氏にお願いした。原曲のイメージを踏襲しつ つも、独自の色も加えた素晴らしいプレイをしてくれた。前述したように、この曲が大好きだっ たことから、イメージは崩さずに、だが改めて現在カバーする意味も加えるべく、アレンジを進め た。冒頭や随所に顔を出す街の音は、2024年3月にDJで訪れた、韓国ソウル市イテウォン駅近く のホテルの部屋で録音したもの。繁華街であるイテウォンではホテルの窓を閉めていてもクラブの 音が聞こえてきて、それをiPhoneのマイクで録音しておいたものをここで使用した。冒頭の「夜明 けを告げに降りてくる天使は」というフレーズに導かれるように、クラブの朝方の空気、スピーカー、そしてレコードやカセットテープを通して現出するいつかどこかの部屋、そうした異なる空間 や時間が入れ替わるようなMixを目指した。
12. QSFQLP3 feat. Ayaka Tatamino
知人の家具メーカー、QUIET SPACE TOOL&FURNITUREのカタログに付属するカセットテープ 用に制作した楽曲をアルバム用にリアレンジ。コーラスはHomecomingsの畳野彩加さんで、ざっ くりとしたオーダーにも関わらず期待以上のコーラスを返してくれた。とても気に入っている楽曲 だったので、コーラス以外のパートは全て差し替え、アルバムのアウトロにふさわしい形で再録し た。
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〈PROFILE〉
XTAL
Photo : Yusaku Aoki
95年からDJを開始。川崎工場地帯の某工場屋上にて行われているインダストリアル・レイ ブパーティー「DK SOUND」で、k404とのTraks BoysとしてレジデントDJを務める。Jun Kamodaとのバンド(((さらうんど)))、Your Song Is Goodのギタリスト吉澤成友とのユニッ ト、様々な海外レーベルで活躍する岡山在住のダンスミュージック・プロデューサー、 KEITA SANOとのユニットでも、精力的にリリースを重ねる。ソロとしては、Crue-L Recordsからの1st『Skygazer』(2016年)、自主レーベルCizimaからの2nd『Aburelu』 (2020年)に続き、カクバリズムより3rdアルバム『EKO』を2024年にリリース。
Crue-L Recordsからの1st『Skygazer』(2016年)、自主レーベルCizimaからの2nd 『Aburelu』(2020年)に続く3作目となるソロアルバム『EKO』がカクバリズムよりリリースされた。
前作『Abureru』から続く、シューゲイズ的エレクトロニック・ソウルフルにディープハウス/ダンスミュージックの血潮を感じさせながら挑んだIDMエレクトロニカに進化深化発展させた入魂ニューアルバム。ヴォイスサンプル、 ゲストヴォーカル(Achico, 畳野彩加)を用いたメロディアスなボーカルトラック が増えているのが今作の大きな特徴ともなっている。ミックス、マスタリングはXTAL自身が担当、アートワークはKotsu (CYK)が担当している。
先行シングルA4「BCF」(sample1)、ヴォーカルにAchicoをフィーチャーした歌物A5「A Leap feat. Achico」、アルバムを締めくくるラスト2曲、ギターに潮田雄一、ヴォーカルにAchicoを迎え たXTALの敬愛するSAKANA「Rocking Chair」のカヴァーB5(sample3)、畳野彩加(Homecomings) のヴォーカルをフィーチャーしたB6「QSFQLP3」も静謐に黄昏る。全12曲。 (コンピューマ)